傍観者のつぶやき

何となく傍観者の視点から、目に映ったものを綴ります。

ポークジンジャー

小ジャレたお店でランチを食べた時の話。
隣のテーブルで豚肉の一枚肉にフルーツソースのようなものかけた料理を食べている方がいた。

「あ、美味しそうだなー」
メニューを見てみれば、今日のオススメは「ポークジンジャー」と書いてある。
1080円という値段は、味に期待して良いはずだ。

ふと疑問に思ったのだが、ポークジンジャーと豚のしょうが焼きの差はなんだろうか。
一応スマホで検索をしてみる。
そこには、ポークジンジャーは一枚肉で、しょうが焼きはバラ肉であることが多い、と書いてあった。

曖昧な表現だが、隣の方が食べているのはポークジンジャーで大丈夫そうだ。
なんとなく安心し、店員さんに注文をする。

料理を待つ間、一緒にいた方に「最近ついてないんですよねー」と泣き事を言っていたら、私たちの後に入って来た女性達がポークジンジャーを注文した。
中々人気らしい。
期待は高まる。

ここで、異変が起きる。
「申し訳ありません。ポークジンジャーは終わってしまいまして。」
どうやら私は最後の1食を食べる幸運に恵まれたらしい。
今年に入り、様々な奇跡的不幸を一身に浴びていたのは、このポークジンジャーのためかも知れない。
ますます期待は高まる。

女性達は他のランチを注文しながら、「ここのポークジンジャー、本当にスゴいのに残念」と話している。
今月から始めた朔日詣りの効果がもう出たのだろうか。(詣でただけに)

そして、ついに一緒にいた方のランチが姿を見せた。
カツカレーだ。
この人はどこに行ってもカレーを食べる。
そば屋でカレーだけ頼んだ人を私はまだ彼しか知らない。

カツよりも後にくるということは、じっくり焼いているのだろう。
最早、昔好きだった女の子に「完璧な美少女」の幻影を押し付け、同窓会で会った時に勝手に幻滅するような精神状態になりつつある。早く会いたい。

「お待たせしました、ポークジンジャーです」
そこには、しょうが焼きがいた。

確かにスゴかった。
量が。
鉄板に山盛りだった。
3Dだった。

カレーの人は笑っていた。
やるせない気持ちもあったが、隣のテーブルにあった料理はなんだったのだろうか。
何かをしないと空しさだけが募る気がした。
初めて冷静にメニューを見る。

まさか、こいつじゃないよな。
だが、豚肉料理はポークジンジャーとこいつ以外は目の前でカレーに横たわるカツしかない。
まさか、トンテキだなんて。

確かに料理を見て、ポークジンジャーかトンテキかと聞かれたら、トンテキと答える余地はあった。
むしろ、豚肉の一枚肉を焼けば豚ステーキ略してトンテキだ。
だが、気にくわないのはトンテキだった事ではない。
値段が800円だったことだ。
ポークジンジャーという名のしょうが焼きより280円安かったことだ。

予期せぬことは常に起こるのである。